サッカーの体力・フィジカルトレーニング①『ローパワー』
今回は以前の記事で書いたローパワーについて、詳細と代表的なトレーニングを書いていきます。
ローパワーを含む体力・フィジカルの分類についてはこちらを
ミドルパワーについてはこちらを
ハイパワーについてはこちらを
ローパワーの特性
上記リンクの記事で紹介した3つのパワーは全て揃ってのものなので有意差はありませんが、ローパワーは最も注意が必要なパワーと言えます。
何故か。試合での実感と重要性の差が極めて大きい能力だからです。
リンクの記事でも書きましたが、ローパワーはミドルパワーと比較して試合での実感があまりありません。実際、試合では筋持久力切れより圧倒的に酸欠の方が辛いです。ですが、不足すると怪我に繋がりますし、練習量を積めないので他のパワーだけでなく技術の成長も遅れてしまいます。ローパワーはあらゆる体力の基礎、ピラミッドの底辺であり、ローパワーの充実がピラミッドの高さに大きく影響します。他のパワーと比較して特別重視する必要はありませんが、注意が必要というのはそういうことです。
オーバートレーニングに注意
ローパワーについては不足だけは避けるべきですが、極端に長けていてもパフォーマンスへの影響は限定的なので、過度に鍛える必要はありません。
それどころかやり過ぎは害もあります。
害の1つ目は疲労です。当然体力には上限がありますから、ローパワーに体力を割き過ぎると他の練習が疎かになってしまいます。ローパワーはピラミッドの底辺なので重要ではありますが、最後に競うのは高さなので底ばかり広くても仕方ありません。
恐ろしいのはもう1つの害です。ローパワートレーニングのやり過ぎは筋力が低下します。
本題から外れるので深くは書きませんが、簡単に言うと脂肪を燃やす段階を越えると、筋肉を分解してアミノ酸をエネルギーとしてしまうので筋力が低下します。
まぁその段階に到達するにはかなりの距離を走る必要がありますが、通常の練習に加えて走り過ぎるとそこに至る可能性は十分あるでしょう。
ローパワーのトレーニング
正直言って、チームとしてはあまりやらなくていいと思います。実際自分が監督ならかなり少なめにします。
「さっき重要って言ってたじゃねぇか」と、思うでしょう。勿論理由があります。
「ローパワーが不足すると練習量を積めない」と書きましたが、裏を返せば日常的に必要な練習量をこなしていれば一定レベルのローパワーを維持出来るということです。
ただ前述の通り注意はします。例えば連休明け。正月休み等の連休明けにいきなりハイパワーからメニューを組むと、簡単に怪我をします。なのでまず基礎であるローパワーを練習に耐えるレベルまで戻し、その後でミドルパワーやハイパワーを試合のレベルまで上げていきます。
怪我明けの選手がジョギングからスタートするのも同じ理由です。
代表的なトレーニングメニューはランニング(長距離)ですが、ペースが重要です。
連休明けや怪我明けは軽いジョギング程度からのスタートで良いでしょう。
通常の練習量以上のレベルを求めるのであれば、練習後に5~6割(速めのジョギング)程度のペースで15~20分程度走るのが効果的と言われています。
ただ体力はかなり個人差があり必要性にも大きな差がありますので、前述の通り必ずしもチーム全員でやる程の重要性は感じません。
・練習の最後まで体力が持たない
・試合中、心肺機能に余裕がある状態で途中から力が入らなくなる
・足が吊りやすい
・ターンやボールタッチの精度が前後半で極端に落ちる
上記のような悩みを持つ選手が、個人的に取り組むようにするのがベストかなと思います。
ただ選手・チームの年齢やモチベーションによっては個々で必要分取り組むというのが難しいこともあると思うので、その場合は毎日、あるいは曜日や期間を定めてチーム全員で取り組むようにするのも一つの方法です。事情は選手・チーム毎にあると思うので、指導者は柔軟に考えることが大切ですね。
ローパワーはとにかく不足していないことが重要なので、そこだけは選手も指導者も意識的に注意するようにしましょう。特に才能が必要な分野ではないので、不足している選手であっても自覚と向上心だけあれば必要なレベルまで上げることは出来ます。