サッカーの体力・フィジカルトレーニング②『ミドルパワー』
今回は以前の記事で書いたローパワーに続いてミドルパワーついて、詳細と代表的なトレーニングを書いていきます。
ミドルパワーを含む体力・フィジカルの分類についてはこちらを
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ミドルパワーの特性
まずおさらいです。ミドルパワーは回復力を表します。回復力を具体的に言うと、息切れが収まるまでの速さや、心拍数の下がりやすさとなります。つまりハイパワーを出せる回数であり、サッカーで言えばダッシュを繰り返す能力となります。
激しい運動により身体が多くの酸素を欲すると呼吸が多くなり、酸素不足が呼吸のキャパシティを越えると苦しくなります。この呼吸のキャパシティを上げて短い時間で酸素をより沢山体内に取り入れる力が回復力でありミドルパワーであるということです。なのでミドルパワーで鍛えるのは筋肉ではなく、血液中で酸素を運んでいる『ヘモグロビン』を増やすトレーニングということになります。
ミドルパワーは極めて実感を伴う能力です。試合中の息切れが減り頭も冴えるので、非常に試合が楽しくなります。私自身の体験で言えば、最もミドルパワーを鍛えていた高校生時代は試合時間が短く感じ、フルタイム出場しかなりの上下動を重ねて終了のホイッスルを聞いた後でも「もう少しやりたいな」と感じる程でした。本気でサッカーをやるのなら一度は体験して欲しい感覚ですね。
ミドルパワーのトレーニング
『回復力』という言葉からも分かるように、全力での運動の間にインターバルを挟むのがポイントになります。目安として5~20秒程度の全力での運動と、同程度~倍程度のインターバル(回復時間)を交互に繰り返しましょう。ポイントは『全力で』動くことです。例えばそもそも20秒全力で動けないのであれば、強度を下げるのではなく時間を短くしましょう。『全力』と『インターバル』を繰り返すのが大事なポイントです。
ここで代表的なトレーニングをいくつか挙げておきましょう。
☆インターバル走
ダッシュとジョギングを交互に繰り返す練習です。言葉通りダッシュの間にインターバルとしてジョギングを挟みます。一般的にはトラックを使用し、指導者の笛を合図にダッシュとジョギングを繰り返します。全力で動くことが重要なので、動く時間に個人差が出てしまう距離ではなく、時間で切りましょう。
☆ シャトルラン
ダッシュの間にターンを入れるトレーニングです。1往復から4往復くらいでサーキットを組むのが良いでしょう。非常に厳しいトレーニングなので、1本の所要時間は長くても10秒以内が適当だと思います。インターバルはシャトルラン所要時間の倍くらいにしましょう。
直線的に走るのと違いターンを挟むことで、より試合で使う部位を動かせるのが大きなメリットです。
☆ 100m走
シンプルですが有効ですし、指導者にとっても管理しやすいトレーニングです。
ゴールラインに並び、逆のゴールラインまで全力疾走。ジョギングで戻ってきてすぐにスタートします。かなりのモチベーションが必要となりますが、初夏頃のタイミングで練習の最後に10本くらいやっておけば、真夏の試合で元気にフルタイム走り切れるようになります。毎日は流石に厳しいので週2-4回くらいを目安にしましょう。
80mや200mでも似た効果を得られますが、サッカーのトレーニングでやるにはピッチサイズで分かりやすい100mがおススメです。
☆ タバタトレーニング
これは少し特殊で、短時間・省スペースでミドルパワーを中心にハイパワー・ローパワーも鍛えられるトレーニングです。方法は簡単で、任意の全力運動20秒とインターバル10秒を1ラウンドとし、8ラウンド繰り返します。言葉にすると簡単ですが、インターバルの短さから分かる通りかなり厳しいトレーニングです。20秒のトレーニングを全力でこなせなければ意味が無いので、選手の技量と相談して行いましょう。
☆ フルコート1vs1、2vs2
冗談のような練習ですが有効です。ミドルパワーは試合で実感があると書きましたが、逆に試合はミドルパワーを鍛えます。ただ通常の試合は疲れたらサボれてしまうので、極限にスリム化し、強制的に休めなくしたトレーニングがコレです。他のトレーニングと違ってボールを使う分多少楽しさもあるので、練習の最後に1点マッチとして、負け残りあるいは3勝したペアから上がり等のルールで行うのが良いと思います。
ポイントはGKを入れることです。GKに回復力は不要なので、GKは容赦なくヘトヘトのフィールド陣が撃ってくるシュートを止めて、即座にスローイングでボールを供給しましょう。
GKへの負荷は別途ハイパワーでかけたほうが効率的です。
ミドルパワートレーニングは辛い
上記のトレーニング例から察しはつくと思いますが、ミドルパワーのトレーニングは辛いです。物凄くしんどいです。ですが自分の為に試合で絶対に実感のあるトレーニングだときちんと知った上で行い、モチベーションが保てるように工夫しましょう。チーム内で選手同士が声を掛け合いながら行うのが理想ですね。