サッカーのトレーニングにおけるフィジカル・体力の分類
今回はサッカーにおけるフィジカルと体力について書きます。
『フィジカル』と『体力』、言い換えれば『パワー』と『スタミナ』ですが、サッカーにおけるこれらを具体的に説明出来る人は意外に少ないように感じます。
例えば、サッカーにおける『スタミナ』って何でしょう。
①長い距離を走れること
②スプリントを沢山出来ること
どちらだと思いますか。この2つは求められる能力も必要なトレーニングも全く違いますが、一般的には『スタミナ』と一括りにされていて、分割する習慣のある人は稀です。
今回の記事ではこれらを必要な形で分類し、出来るだけ分かりやすくトレーニングに活かせるようにすることを目指します。
3つのパワー
早速ですが先程のスタミナ2項目に瞬間的なパワーを加えて、3つに分類してしまいましょう。
これらを『ハイパワー』『ミドルパワー』『ローパワー』と言います。
ハイパワー
まずは『ハイパワー』からです。ハイパワーとは別名『無酸素系』とも呼ばれ、瞬発力を表します。サッカーで言えばキック力やジャンプ力、短距離のスピードですね。シュート力や一瞬のスピード、ヘディングの高さやパワーもハイパワーです。特にフォワードやセンターバック等には特に重要な能力ですね。
→ハイパワーの詳細記事はこちら
ローパワー
ミドルパワーは特殊なので、先に説明しやすい『ローパワー』から書くことにします。ローパワーは別名『有酸素系』とも呼ばれ、持久力(筋持久力)を表します。長時間はあるいは繰り返しの運動継続能力ですね。サッカーでは単純に運動『量』を表す能力となります。
ローパワーは試合での活躍に対する実感はあまり無いものの練習を重ねる体力として非常に重要なので、最も基本となるパワーでもあります。別の言い方をすると、ローパワーが無い選手はミドルパワーやハイパワーの練習メニューを消化することが出来ません。つまり、体力におけるピラミッドの底辺にあるのがローパワーです。
→ローパワーの詳細記事はこちら
ミドルパワー
最後に『ミドルパワー』です。ミドルパワーは回復力を表します。回復力と言われてもピンとこないかもしれませんが、簡単に言えば息切れが収まるまでの速さや、心拍数の下がりやすさですね。別の言い方をすると、ハイパワーを出せる回数であり、サッカーで言えばダッシュを繰り返す能力となります。上下動を繰り返すサイドプレイヤー等にとって特に重要な能力です。
この最も馴染みの無い能力が、プレイヤーとして一番試合で実感のある『体力』です。サッカーは試合中マラソンのように長く走るシーンは殆どありません。20m程度の短いダッシュ、ストップ、ジャンプ、ターンと、短く鋭い動きが大半、他には時折オーバーラップやカウンターで最大60m程度のダッシュがあるくらいでしょう。となると、試合で実感のある体力は長く走るローパワーよりも何度も走るミドルパワーということになります。なので実際高い強度でプレイしていると筋力が長く続くよりも息切れをし辛い方が遥かに楽に感じるわけです。
→ミドルパワーの詳細記事はこちら
ステップワーク≠ハイパワー
勘違いしやすいところを1つ。サッカーにおいて重要なステップワークはジャンプ等を行うので勘違いを誘いますが、ハイパワーとは別物です。ステップワークの向上を目指してラダーやジャンプ等でトレーニングを行う一番の目的はボディコーディネーション能力の強化です。
ボディコーディネーション
3つのパワーと全く別枠となるボディコーディネーションとは何か。簡単に言えば思った通りに動く力ですね。どういうことか実感を得る為に簡単な遊びをしてみましょう。
①輪ゴムを机の上に置く
②手を膝に置く
③出来るだけ素早く輪ゴムの中心に中指を置く
いかがでしょう。殆どの人は輪ゴムが動いてしまったのではないでしょうか。
この精度をあらゆる動きで高めるのがボディコーディネーションのトレーニングであり、ステップワークです。鍛えているのは脳であり、脳と肉体の接続であり、肉体の動きそのものでもあります。印象の通り3つのパワーより鍛えるのが難しい能力ですね。
先程の遊びのように最も繊細な利き手の指先ですら思った通りにコントロールするのが難しいということを考えれば、同じことを足で丸いボールを相手に行ったり、高速でターンする時に適切なバランスと踏み込みを行うのがどれだけ難しいことか分かるでしょう。
目的を明確化してトレーニングを
今回挙げた『ハイパワー』、『ミドルパワー』、『ローパワー』、『ボディーコーディネーション』の4つは全てサッカーにおいて重要ですが、混合してしまうと目的がぼやけてトレーニングの効果が薄れてしまいます。ただやる・やらされる、あるいはただ頑張るのではなくしっかりと目的意識を持ち、効率良くトレーニング出来るように知識を蓄えていきたいですね。