練習を読み解く(サガン鳥栖:2023/1/19)

 今回はサガン鳥栖の練習動画を見ていこうと思います。鳥栖は近年毎年のように主力が入れ替わりながらも気付くと中位にいるチームなので、練習にもその強さの一端があるのではないかと気になっていました。これまで練習動画を見てきた川崎F・湘南・鹿島のどのチームとも違う特徴のある練習をしているので、是非内容を確認してみましょう。

【サガン鳥栖・読谷村キャンプ】5日目/1月19日

サーキットトレーニング[0:51]

 いきなりですが鳥栖の練習で最大のポイントです。他のチームではこのタイミングではウォーミングアップも兼ねて自重でのフィジカルトレーニングを入れることが多いのですが、鳥栖はチューブやウェイトを使って負荷をかけています。1つ1つは短い時間ながら上半身下半身体幹と満遍なく色々な筋肉にしっかりと負荷をかけているのが動画からもよく分かりますね。どのチームも始動から間もないタイミングではサーキットトレーニングに時間を割いていますが、鳥栖は始動から10日経っているこの日もかなりしっかりと負荷をかけており、チームとして求めるフィジカルの基準がかなり高いことを伺わせています。

ゴールキーパー練習[2:28]

 バックステップから速いゴロをキャッチする練習です。ステップ後に素早くニュートラルな重心位置を作るのがポイントです。ステップ後に腰を落としてのセーブとなるので、見た目程楽ではない練習ですね。

ダッシュ[3:40]

 所謂素走りです。距離は30m程度でしょうか。動画中は1本だけですが、先程負荷付きのサーキットをやっていますし、それなりの本数をこなしているものと思われます。

3vs1or4vs1ロンド[3:48]

 非常に活気のあるロンドです。この活気はもしかしたらこの日初めてボールを使う練習だったのかもしれませんね。ミスは出ているもののパススピードの速さが目立ちますが、それ以上にサーキットで追い込んだ後のDFはかなり負荷が重そうです。
それから、鳥栖ではフラットなタイプのマーカーを使用しているのが良いなと思いました。遠くからの視認性は一般的なマーカーコーンに劣りますが、ボールの通過を邪魔せず躓きの防止にもなる特徴があるので、使い分けることが出来れば便利そうです。

5vs5+GK ゲームトレーニング[4:42]

 かなりの熱量を感じるゲームトレーニングです。ゲーム中の声掛けも少し鹿島に近い印象になりますし、ゲーム間のコーチ陣の指導も力が入っています。

ポイントは[4:46]のシーン、「入ってない」「入ってる」と選手がアピールしているところですね。ボールは明らかにゴールネットに突き刺さっているのでシュートに関するアピールではありません。これはハーフウェイラインより先に全てのフィールドプレイヤーが入っていないとゴールにならないというルールのゲームであり、「(FP全員が敵陣に)入ってない」「(FP全員が敵陣に)入ってる」というアピールをしていたのでしょう。ゲーム開始時点で「5vs5にしては他のチームに比べて随分広いコートでやるんだな」と感じていたのですが、この敵陣侵入ルールがあることからこのゲームはそもそも走ることをメインテーマにしていたということが分かります。ボールがタッチラインを割った際にGKからボールを供給されていることもゲーム展開のスピードアップに寄与しており、かなり厳しく休ませない工夫をしているなと感じました。

それから流石だなと思ったのがボールの動かし方。FPが僅か5人でかなり走って苦しい状況であるにも関わらず、GKからのリスタートで縦パス→横に叩くというビルドアップの基本となる流れがしっかり染み付いています。体力を言い訳にしない鳥栖のサッカーはこうして養われているのだと非常に納得するゲームトレーニングでした。

ラダートレーニング

 マーカーコーンを使用していますが、内容はラダーですね。ウォーミングアップとボディコーディネーションのトレーニングです。
ゲームトレーニングの後にやる練習ではないですし天気も変わっているので、上述のゲームトレーニングまでが午前練習、このメニューから午後練習と思われます。

インタビューからこの後シュート練習等も行ったようですが動画はここまででした。

全体を通して

 とにかく身体を追い込んでいるなという印象です。この動画はキャンプ5日目の動画ですが、他のチームの同時期と比較してもかなり強い負荷をかけています。筋トレについては個人練習とするチームもあるので一概に「鳥栖だけが凄い」と言うつもりはありませんが、このタイミングの全体練習にウェイトを持ち込んでいることからチームとして最低限求めるフィジカルの基準がかなり高く設定されているのは間違い無いでしょう。主力選手が入れ替わっても簡単には弱体化しない鳥栖の分厚い土台はこういう練習で培われているのでしょうね。走り負けない、当たり負けない鳥栖を作っている環境はコレなのだと、非常に納得しました。また、この厳しい練習でも声が途切れない雰囲気の良さも素晴らしいですね。個人的には学生サッカーの参考教材としてもかなり良い練習だったと全体を通して感じました。

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